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分子研リポート1997 | 分子科学研究所

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5.将来計画及び運営方針

昨年度は電子計算機センター及び極端紫外光実験施設の将来計画の検討を行い,その結果を分子研リポート’ 96に報告した。 今年度は,昨年8月の「大学の教員等の任期に関する法律」の公布に伴い,これまで研究所内の申し合わせとして実施してきた 教官の任期制を再検討し,あわせて教官の停年制についても検討を開始した。分子科学研究所は93年以来,研究系と研究施設 における研究活動及び共同利用等の業務に関する点検・評価を行い,その結果に基づいて将来計画を作成し,一部を実現して きた。分子研はあと2年で創立25周年を迎えるが,将来の分子科学の展開,即ち国内のみならず世界的規模での,より一層独創 的で新しい展望を持った分子科学の展開を目指して行かなくてはならない。その基本となるのが構成員としての研究者であると の認識に立ち,教官の任期制,停年制を研究所の将来の人事政策の総合的な課題として捕え,検討することとした。このために,

「教官任期制検討小委員会」および「教官停年制検討小委員会」を設置した。またこれと関連して,国内における分子科学の発展 を支援すると同時に,研究所に課せられている全国大学共同利用機関としての役割をより効率的に遂行するために,流動部門の 在り方を考える「流動部門検討小委員会」を設けた。これら3検討小委員会は97年秋からそれぞれ数回の会合を重ね,その結果 を98年2月中旬の将来計画委員会全体会議に報告し,所内の教授・助教授全員による合同討議を行った。以下に,昨年度に引き 続いての電子計算機センター将来計画の検討結果の報告,将来計画委員会全体会議での検討の要約及びそれを踏まえた形 での3検討小委員会の報告を記す。

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5-1 将来計画全体会議報告

平成10年2月16日(月)に分子研教授・助教授全員によって構成される将来計画委員会が開催された。上述の三つの小委員 会の検討結果の報告を受け,それを踏まえてさらに突っ込んだ討議を行った。

流動部門の在り方については,その有意義な点と同時に問題点を確認し,この制度をより有効に実行していくために小委員会 が提案している「開発プロジェクト研究経費及び流動旅費」の概算要求を推進していくことで合意した。任期制については,分子 研が今まで行っている人事政策の良さを確認した上で,これを形骸化させる事なく「法制化」に伴う措置をどうすべきかについて の討議が行われた。その結果,研究系助手については,就任後6年目から従来から行っている1年毎の主幹・施設長会議及び教 授会議における任期延長願いの手続きに加え,3年毎に人事部会において再任の審査を行うという方式に大勢の賛成が得られ, 今後運営協議員会議及び評議員会に諮っていくこととした。なお研究系以外の助手については従来通りとした。最後に,教授の 停年延長問題についての活発な討議が行われた。論点を纏めると次の2点となる。(1)分子研の高水準の研究活動を維持し増進 していくために停年を延長するというのには十分な理由があるが,これには個人差もあり,画一的に実施するには問題がある。(2) 停年延長は長い目では時代の趨勢ではあるが,今すぐ実行すべきかどうかタイミングの問題などの更なる検討が必要であろう。 これらの論点を踏まえ,所内でさらに討議を積み重ねていくことで合意した。

以上の討議に基づき,小委員会報告を若干修正の上本リポートに掲載することとした。以下の 5-3,5-4がその詳細である。

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5-2 電子計算機センター将来計画  − 1999 年と 2000 年の計算機更新に向けて−

5-2-1 現有計算機の構成と利用状況

平成10年1月現在の利用者の総計は約716名,研究課題は187件である。電子計算機センターの計算機システムは,平成6年 1月からスーパーコンピュータNE C S X -3が,平成 7 年 1月より並列計算機 IB M S Pと高速汎用計算機 NE C HS Pがそれぞれ導入 された。この時から,オペレーティングシステム(OS)もUNIX に統一された。また汎用演算性能および並列演算性能を増強する目 的で,平成8年9月よりNE C HPC 計算機,平成 9年 10月より日立製作所 S R 2201を導入し公開運用を行っている。

S X -3は3個のベクトル演算器を持ち最高性能は19.2ギガフロップスである。また,2ギガバイトの主記憶容量とジョブの一時作 業領域として高速に読み書きが可能なR A IDディスクを約60ギガバイト持つ。現在では大規模な配置間相互作用(C I) 計算や分 子動力学計算など,ベクトル化率が高くしかも大容量の主記憶と一時記憶装置を必要とする大型ジョブを中心に利用されている。

分散メモリ型並列計算機 S P2は,平均 100メガフロップスの性能をもつ 48 個の演算装置(C PU ノード)から構成されており,各 C PUノードは40メガバイト/秒以上の高速度で互いに通信を行うことが出来る高速ネットワークスイッチにより結合されており,メッ セージパッシング型の並列計算プログラムの実行を効率よく行うことが出来る。S P2は現在約 3分の2のC PUノードは主に逐次実 行型のジョブによって利用され,残りの3分の1は並列計算ジョブ用に利用されている。S P2の導入後約3年が経過し現在では並 列ジョブ処理環境を利用するユーザの数が徐々に増え,また利用法が高度化する傾向が見られる。

HS Pは,高性能の汎用高速計算機であり,2ギガバイトの主記憶装置と約20ギガバイトのR A IDディスクをもつ。HS P計算機は, ベクトル化率はあまり高くないが,SP2の逐次専用ノードでは実行が困難な大容量メモリと一時作業ディスクを必要とするジョブの 実行に利用され,その意味でスーパーコンピュータと並列コンピュータそれぞれの役割を補間する重要な役目を果たしている。 さらに平成 8年 9月より高速汎用システムの演算能力を増強する目的で NE C HPC を導入した。1ギガバイトの主記憶と2ギガバ イトの拡張記憶装置を有し,HSPと同様に中規模なベクトルジョブの処理に利用されている。また,平成9年11月から日立製 並列 計算機 S R 2201(16C PU)を比較的低い課金係数で公開運用しているが,並列ジョブの利用率はまだあまり高くない。

分子研計算機センターのC PU サーバーとしての能力は平成 6年 1月にはそれまでのおよそ9倍,平成7年 1月には平成6年 1月 以前のおよそ14倍になったが,年間平均でもその全C PU能力の約70%が利用されており,常時数十件の待ちジョブが待機して いる状況になっている。当センターの計算機は,365日24時間運転を行っているため,実稼働率が7割を超えた場合には,平日の 日中には常に待ちジョブがある状況となる。特に学会前の混雑時には投入したジョブが実行されるまでの待ち時間が数日に及ぶ 状況も発生している。各計算機の C PU 能力の増強により,このような事態を早急に改善しなければならない。

5-2-2 1999 年と 2000 年の計算機システム更新

平成9年度,文部省に概算要求をしていたスーパーコンピュータ借料の増額によるC PU能力の増強は認められなかった。また 導入一時経費もつかないという厳しい結果となったため,外部委員を含む「スーパーコンピュータ検討小委員会」の結論に従い, 来年度(平成11年1月)に機種を更新することを断念し,更新を1年延期することとした。平成10年の春より再度,文部省への増額 による更新要求を行う。

スーパーコンピュータ検討小委員会では,スーパーコンピュータの更新を 1年延期したことから,汎用システムの機種更新を1 年早めて,平成11(1999)年1月に行うことが望まれるとの結論を得た。これを受けて,文部省と協議の結果,現有の汎用高速演算 システムであるIB M S P2とNE C HS Pを平成 11年 1月に新たな機種に更新するための準備を進めている。現在,計算機メーカ各 社からの資料提供の招請と仕様書原案の提示を行い,各社からの提案を求めている段階である。最高演算性能が5ギガフロッ プスを上回る機種の導入を予定していることから,スーパーコンピュータに準ずる調達手続きを採用することとなった。今後,平成 10年5月1日に最終仕様書が完成し,6月22日入札,7月7日開札(機種決定),8月から新機種への移行作業を開始し平成 11年

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1月から2月に公開運用開始の予定で調達手続きを進めている。 (1) 汎用高速演算システムに要求される演算性能

大学の研究室では実行が困難な大容量の主記憶及び一時作業ディスク容量を要求するジョブや,多数のCPUを利用する並 列ジョブを実行できる計算環境を提供するため,現有の中規模ベクトル計算機(HSP)と並列計算機(SP2)といった2つの異なる タイプの計算機を汎用システムとして更新する。ベクトル計算機としては,従来の半分程度のマシンクロックと2倍程度の数のベ クトルパイプラインを備えた新型機が来春,スーパーコンピュータメーカー各社から出荷されるため,並列度は5∼6程度と低いが 単体演算性能が6ギガフロップス程度のベクトル並列計算機を導入できる予定である。また今後,分子科学分野において並列プ ログラムを積極的に開発してゆくための環境として,各演算器の性能が100メガフロップス程度でできるだけ多くのC PUを有する 並列計算機を導入する必要がある。汎用高速演算システム全体の性能としては,更新前の10倍以上の演算能力が必要である。

また計算機開発の技術進歩が非常に速いことから,今回のシステム更新を機会に,汎用高速演算システムのレンタル期間が 4年に定着化されることが望まれる。

(2) スーパーコンピュータシステムに要求される性能

スーパーコンピュータの更新目的の第一は,分子科学分野において大学等では実行が困難である大規模なベクトル並列計算 を行う計算環境を整備することにある。一方,現状のように投入したジョブが実行されるまでの待ち時間が数日に及ぶ状況を早急 に改善しなければならないため,中小規模のシリアルジョブの実行スループットを向上させる配慮も重要である。このように、ある 意味では相反する更新要求を,レンタル期間中の運用変更によって適応可能とする計算機構成を選択することが重要である。す なわち,高い単体ベクトル演算性能を持つ計算ノードをできる限り多数導入し,C PUリソースの分割運用によって,大規模ベクトル 並列計算の実行と中小規模ベクトル計算の両方が干渉することなく実行できることが重要である。これを実現するためには,シス テム全体として大容量の主記憶と一時作業ディスクが必要である。

具体的には,現有スーパーコンピュータの単体CPU能力を上回る8ギガフロップス程度のベクトル計算ノード64以上が必要で あり,16ノードと48ノードのようにリソースを分割運用する。主記憶は128ギガバイト以上,作業ディスクは1000ギガバイト以上必要 である。平成8年に発足した次期スーパーコンピュータ検討委員会では単体C PU性能を重視するかC PU台数(並列計算の規模) を重視するかで活発な討論がおこなわれた。並列度の高いプログラムへ比較的容易に移行が可能な分子動力学(MD)分野の 研究者からはC PU 台数を重視すべきとの意見がだされ,一方,大規模な分子軌道(MO)計算や配置間相互作用計算などに代表 される並列化が困難な電子状態分野の研究者からは単体のベクトル演算性能と大容量の主記憶および拡張記憶装置の重要性 が示された。上記のC PUリソースの分割運用は,大規模ジョブの実行と中小規模ジョブのスループットを運用によりバランスをとっ てゆく観点としてだけでなく,MD 計算とMO 計算分野の要求に柔軟に答えて行くための方策としても重要である。

又,C PUリソースの利用状況によっては,超大型計算を奨励する新しい運用方法の導入も検討する必要がある。従来の課金制 度とは違う形で,研究課題を募集し、従来のC PU時間やメモリー利用制限の枠を大幅に越えた計算機利用を可能にして,優れた 研究成果を引き出すような施策の検討である。

(3) センターの運用方針

前回の報告にもあるように,計算機センターの利用者は大別すると4 つに分類される。 グループ A : 分子研理論部門( 計算センター含む)。

グループ B : 所外の大きな理論グループ。

グループ C : 所外の小さな( 一人ないし三人程度の若い) 理論グループ。 グループ D : 実験を主体とする研究グループ。

それぞれのグループで計算機を利用する分野・形態や,必要なCPU時間に相違があり,どのグループを重点的にサポートして

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行くかの議論には慎重を要す。最近では,研究所内外のいくつかの研究室単位で強力な計算環境を持つことも一部では可能に なってきている。そのような研究グループがさらに強力な演算性能を必要とする研究プロジェクトで成果を上げるためには,グルー プ AとBに一層力点をおいた運営方針を取ることが望ましい。一方,グループ CとD の研究者にとって,本センターは研究遂行上 不可欠なものであることも事実であり,今後とも適切な配慮が必要である。

(4) 世界のスーパーコンピュータの動向とセンターの立場

現在の計算機は様々な観点から分類することができる。たとえば,単体C PU性能の観点からは,1C PUのベクトル性能が5ギガ フロップス以上の高価な計算機,4ギガフロップス 以下のもの,そしてワークステーションに代表されるベクトル演算器を持たない 安価なものという分け方ができる。また,並列度の観点から見ると,並列度の高い(3桁以上の)超並列計算機,並列度の少ないも の,並列計算ができないものという分け方ができる。またC PUとメモリの構成の違いからは,全てのC PU がシステム全体のメモリ を共有する「共有メモリ型」と各C PUがそれぞれ局所メモリを持つ「分散メモリ型」,そして分散メモリのハードウエア構成を持ち ながら基本ソフトウエアにより論理的に共有メモリ計算機として利用できる「分散共有メモリ型」に分類することができる。さらに, 並列計算機では C PU 間を結ぶ通信経路のトポロジーと通信性能の違いによって幾つかの形態がある。

欧米では,計算機アーキテクチャの研究を専門とする分野はもちろんのこと,科学計算分野においても単体C PU性能の向上に 頼る時代は終わり,基本ソフトウエアと高速通信技術における並列計算技術の発展に将来の大規模計算環境を委ねる機運が高 まっている。ここで並列化の基本ソフトウエア技術として分散共有メモリ計算機におけるマルチスレッドや分散メモリ計算機のメッ セージパッシングが挙げられる。 たとえば米国では1996年よりA ccelerated S trategic C omputing Initiative (A S C I)を国家プロジェ クトとして提案し,コンピュータメーカーと国立研究所が共同で大規模な超並列計算機の開発を推進している。我が国でも欧米の 計算機動向に追従し,かつて単体C PU性能で世界1,2位を争っていたスーパーコンピュータメーカーも,超並列計算機のみの開 発に方針転換している。このような状況の中,電子計算機センターは将来にわたり最先端の大規模計算環境を分子科学者に提 供することを最重要と考え,計算機アーキテクチヤの動向に注視する努力を怠ってはならない。一方,現状では並列コンパイラや 並列プログラム開発のための支援ツールが未成熟な状況であることもまた事実であり,分子科学計算分野はあくまで高速計算機 を研究道具として利用し続ける1研究分野であり,安易に並列計算機一辺倒の運営に踏み切ることも慎重にしなければならない。

5-2-3 分子研における計算分子科学分野の重要性とセンターの役割

今日,理論化学的手法の発展と計算機の進歩によって,従来では不可能と考えられていたような複雑な系を不必要なモデル 化を行わずそのまま研究対象として扱うことができるようになってきている。分子科学における計算科学は,単に実験の解析にと どまらず実験の先導的な役割を果たしており,90年代の後半に至り計算的手法の重要性は質的転換を遂げたと言える。21世紀 において計算分子科学は一層の発展が期待されている。特に,分子研の理論部門は平成7年度から1部門が増設され,計算機 センターのグループを加えると専任の研究グループは7になった。各研究グループは独自にワークステーションを持ちプログラム 開発や応用計算を進めているが,同時に計算機センターの計算機利用の中で大口利用者でもある。計算機センターは,研究所 内の理論グループに卓越した計算環境を提供していく必要がある。そのためには、所外には公開しない特別な運用を行う計算機 の導入も検討していく必要がある。その一環として,理論研究系と計算機センターのスタッフが中心となって,たとえば文部省研 究基盤重点設備費に「計算分子科学の展開」を要求していくなどの努力も必要である。

1986年のベクトル型スーパーコンピュータのセンターへの導入は,分子動力学計算と反応動力学計算分野の研究者に大きな 刺激を与えた。この様に将来の超並列スーパーコンピュータの導入が,新たな分子科学計算分野の進展を促す可能性も十分に あり,前述のように超並列時代を見据えた方法論の開拓が重要である。計算機のハード・ソフトの両面の進歩は速く,またその最 新の成果を研究に取り入れることによって,質的な変化をもたらす研究を進めることが可能になる。計算機センターの現スタッフは

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あくまで計算機利用者の一員として,計算機アーキテクチャの動向や並列ソフトウエアの進展状況を冷静に判断し,プログラム開 発やアルゴリズム理論の非専門家である分子科学者に適切な計算環境をバランスよく提供するための人員構成をとっている。一 方,計算機の発展に密着しベクトル並列型,超並列及び分散共有メモリの並列計算機などの新しいアーキテクチャの計算機の 能力をフルに活用するためのスタッフも重要であり,分子科学計算アルゴリズムの開拓や,計算機アーキテクチャの特徴を生かし た分子シミュレーションプログラムの開発研究を行うことのできる研究グループが,計算機センター内に新たに1グループ(助教授 1,助手1,技官1)は必要である。また研究要素として大規模なソフトウエアの構築を含む研究開発テーマなど,多くの若手研究者 を必要とする分野(この分野は欧米に依然立ち後れていると言わざるを得ない)では,研究系教官と共同でプロジェクト研究課題 を提案し,大学等では困難な課題にも挑戦してゆく必要がある。

5-2-4 国際分子科学計算センターとして

分子研理論部門における外国人長期滞在研究者の割合は高い。インターネットを通じての計算機利用が可能になった今日, これら長期滞在者は帰国後も共同研究が継続されるようになっている。このようなインターネットを通じた国際共同研究も進めてい く必要がある。また,現在分子研が概算要求している「多国間国際協力事業」の一つとしてプロジェクト方式の研究課題を新たに

設定することが可能であろう。

アジア諸国を中心に,計算環境が十分備わってはいないが潜在的に優秀な分子科学研究者を持つ国々の研究者に対し,プ ロジェクト申請の道を開き,国際的な計算機センターへ飛躍させる事は今後の検討課題である。この制度の実現のためには,計 算環境の一層の充実が何より前提であり,さらに課題審査制度の確立,専任の助手(出来る限り外国人の)の採用など多くの課題 を解決しなければならない。

5-2-5 センターライブラリ開発の研究プロジェクト化

センターライブラリ開発制度を見直し,件数を絞って集中的に開発支援できる形にしなければならない。外部研究者に開発プ ロジェクトを公募すると同時に,予算的措置を伴ったプロジェクト開発制度を発足させることも検討する必要がある。

5-2-6 Q C L D B の事業化

センターのスタッフが 過去に積 極的に参加し,量 子化学 者のみならず広く化学・物理 学研 究者から高 い評価を受けている QC L D B ( Quantum C hemistry L iterature D ata B ase)の開発に対し今後も予算的にはもちろんのこと,センターの業務として支援 する体制をとり続ける必要がある。現在,米国のいくつかの国立研究機関では,W W W (W orld W ide W eb)を通じてその機関が作 成したデータベースを全世界に公開している。このような形の全世界の学会に対する寄与は,特に生物学や素粒子・原子核の分 野などではその研究機関の一つの「業績」として高く評価されている。

我が国ではデータベース作成による世界の学会への寄与は,QC L D Bを除いて皆無であると言われているが,平成9年夏から はQC L D Bも,W W Wを通じて登録制の公開を試験的に開始した。この公開をハード・ソフトの両面で長期的に安定運用をするた めには、正式に分子科学研究所の事業の一つとする必要がある。1)データベース作成・管理・運用のためのハードウエア整備,2) データーベース作成のための謝金と事務費の確保のために予算的措置をとる必要がある。もちろんQC L D Bを開発・作成してい るQC D B (Quantum C hemistry D ata B ase)研究会と緊密に連携をとってこの事業は進めなければならない。

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5-2-7 情報ネットワークと計算機センター

平成7年度末に完成した岡崎国立共同研究機構の超高速A T Mネットワークシステム(新OR IONと呼ぶ)によって,分子研のス タッフ・学生の電子メール・インターネットの利用は著しく向上し,ほとんどの研究者にとって情報収集と発信のための不可欠な手 段になっている。計算機センターは機構情報ネットワークの構築と運用に当初はたずさわらなかったが,平成7年度に情報ネットワー クの担当技官が採用され,センターに配属されたのを契機に,センターは分子研内のネットワーク業務に関与するようになった。計 算機センターの主要目的は,分子科学における計算科学の支援であり,情報ネットワーク,特に電子メールなど情報交換を支援す る業務はこれまで軽視されてきた。これからも,このような業務は主要業務とはならないが,上述のように,研究所内はもとより国内 外との高速情報交換網は,計算科学を推進する上に非常に重要な基盤設備であり,また,情報ネットワークを企画・管理・維持す るのに必要な知識や技術は計算機センターのスタッフに要求されている知識や技術と多くの共通部分があるので,センターは,分 子研内はもとより,岡崎国立共同研究機構内のネットワークの企画・運用に関与する必要がある。 

センターの計算機を国内外の研究機関から高速かつ安定に利用するために,名古屋-岡崎間の情報交換速度を主要大学間 と同じ速度に常に維持していく必要がある。そのための一つの手段として計算機センターの予算の中で学術情報センターへの専

用回線を契約する可能性も追求する必要がある。

(8)

流動部門

専任部門 流動元大学

研究室

人材の自由な交流

専門を生かした共同研究

5-3 流動部門の活性化を図る「流動部門開発プロジェクト研究」制度

分子科学研究所では我が国で最初に流動部門を設置し,研究面のみならず人事の流動性を高めることに大きな成果を挙げ てきた。平成9年度にこの流動制度の点検評価を行い,これまでの流動経験者を集めて長所短所を分析し,今後のこの制度の更 なる活性化を図るにはどのような改善をし,また,どのような新しい枠組みをとるべきかを議論した。

流動制度の最大の魅力は,大学での講義や雑務から解放され研究に専念できることにある。また,研究面においてもこの機会 に最先端の研究に参画し,新しい一歩を築きたいという気概を持って研究者が集っている。しかし,点検評価の結果明らかになっ た重大な問題点の一つに,流動元の大学を完全に離れた研究体制をとると流動終了後に研究室を再構築しなおさねばならない など,大学の研究者にとってマイナス面が多いという理由から,大学側の積極的な対応が阻害されているという現状がある。又, 流動元の大学の研究室に所属する学生が岡崎に移ることは,学生の転居に係わる膨大な経費,学生の流動元大学での単位取 得の問題などのために実質的には不可能に近い。分子科学の実験を中心とする研究は,教授や助教授のみで行うという体制で はなく,スタッフと学生のチームワーク体制が取れないと進まないというのが実状であり,この実状を無視して流動制度を活性化す るのは困難が多い。この問題を克服し真の活性化を図るには,次の3点を考慮する必要がある。(1) 従来の分子研中心の体制 ばかりでなく, 流動元の大学の研究室を巻き込み,そのスタッフや学生全員が積極的に参加できるような体制を実現する。(2) 分 子研で最先端の早急に解決すべきテーマを開発プロジェクトとして企画し,このプロジェクトを実行しうる研究者を招へいする。

(3) このプロジェクトに,所内グループも係わることによって,流動部門研究室・流動元大学研究室・分子研内部の関連研究室の 3組織が一体となってプロジェクトを推進するという最も実効性の高い体制がとれることになる。また,現在の流動促進経費の枠を 大きく越えたプロジェクト研究経費の設定によって,より大型の研究が可能になり,大学の研究者にとっても大きな魅力となるため 優秀な人材が流動制度に応募するようになって,大きな成果が期待される。これは,分子科学研究所の活性化に,研究面のみな らず人的交流の面でも大きく貢献する制度である。

現在の流動部門に係わるプロジェクトとして次の3課題を提案する。これらプロジェクトは,2年ないし4年間継続するものとする。 1 「金属錯体イオンによる酸素分子の活性化」

2 「界面ナノプロセスの開発」

3 「大気環境におけるイオンクラスターの動態」

プロジェクトの新しい実行形態

      

流動プロジェク ト研究

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[流動プロジェクト研究 -1]

「金属錯体イオンによる酸素分子の活性化」

地球上の生命体が活動するためのエネルギーはA T Pの加水分解によって供給されおり,逆反応のA D PからのA T P形成は酸 素分子が鉄あるいは銅イオン上で水に還元される際に放出されるエネルギーにより供給されている。このように酸素分子は生体 にとって必須であるが,また各種の病気の原因となっていることも指摘されている。たとえば,酸素分子は各種の金属と反応して 金属ーパーオキサイド付加体を形成し,有機化合物から水素を引き抜くことにより,D NA やアミノ酸に致命的な損傷を与えること が知られている。したがって,金属ーパーオキサイド付加体の反応性を明らかにすることは,金属イオンによる酸素分子の活性化 の本質を明らかにすることでもあり,炭化水素の酸素酸化反応への応用も期待される。本研究では各種の金属錯体と酸素分子と の付加体の合成・単離を行うとともに,活性化された酸素による炭素ー水素結合切断を行う計画である。

[流動プロジェクト研究 -2]

「界面ナノプロセスの開発」

L S Iの微細化が極限に達しつつあり,これまでのスケールダウン一辺倒の延長線上にない新しい量子効果デバイスの発明の 必要性が急速に高まりつつある。即ち,より人間の頭脳に近いコンピュータを目指す上で飛躍的な進歩をもたらすことが期待され, 新しい量子効果デバイスの発明の科学技術全般への影響は計り知れないものがある。量子効果デバイスの研究はすでに活発 な展開がなされているが,実用性を考慮した場合,量産性のあるナノ加工技術の実現が必須であるが,今のところそのような研 究は全くなされていない。放射光励起プロセスは,その高い空間解像性(∼10nm ) ,低損傷性から,量子効果デバイス製作のた めのナノプロセスとして有望である。本プロジェクトでは,このような観点から,分子研放射光装置(UV S OR ) を用いた放射光励 起エッチング反応により半導体表面にナノ構造を形成する技術を開発する。また,この表面反応をS T Mや赤外反射吸収分光な どにより解析し,構造評価や,反応機構の解明を行う。

[流動プロジェクト研究 -3]

「大気環境におけるイオンクラスターとその動態」

自然界の様々な環境,即ち,水を主体とする海や河川,植物や動物の内部,地球大気,あるいは宇宙空間において,分子クラ スターはその性質や機能の発現に大きな役割を果たしている。大気中には水を主成分とする様々のクラスターが存在し,霧やス モッグ発生などの身近な現象にも深く係わっている。近年,大気中に硫酸や硝酸イオンが形成され,これが生態系に大きな影響 を与えていると議論されるようになった。酸性雨やイオンミストは森林破壊を引き起こし,私たちの身近な問題ともなっている。この ようなイオンクラスターの存在はまた,時として電波障害を引き起こし,航空機や船舶そして自動車の電波誘導にトラブルを与え るなど,イオンクラスターの存在は様々な環境で目に見えない形で影響を及ぼしている。しかしながら,その研究は全く手つかず といってよい状況であった。本プロジェクトは,この大気中イオンクラスターの生成・消滅・反応・成長・拡散といった動態を明らか にするための基礎的研究を行うものである。

◎各プロジェクトに共通の新規予算事項

1. 開発研究費:取り上げるテーマは従来の枠を越えた開発研究を主体とするため,装置制作等に多くの費用を要することが 多い。この開発を積極的に推進するためにこの開発研究費は不可欠である。

2. 流動旅費:プロジェクトに係わる流動教官および特別共同利用研究員が1年に 6往復程度行き来し,分子研に長期滞在 しながらもプロジェクト遂行に関して流動元との自由な交流を可能にする。

(10)

5-4 教官の人事方針

5-4-1 任期制度検討小委員会報告

任期制度の導入に関して検討する委員会を3回開催し,合意に達した部分についてまとめる作業を行った。さらに2月16日開 催の第12回将来計画委員会において委員会の報告を行い承認を得た。以下では任期制度検討小委員会の議事録とまとめの文 書「任期制度について」を示す。

(1)第1回任期制度検討小委員会(H9.11.5)

出席者 井上克也,小杉信博,谷村吉隆,藤井正明,宮島清一,森田紀夫,藥師久彌     田中晃二(委員長)

    齋藤修二(オブザーバー)

個々の委員の意見に基づいて議論した。その結果を各所属系・施設に持ち帰って助手層を含めて全体の意見を次回にまとめ ることとした。

1) 全般

全員の一致した意見は「今の人事システムで問題はない。法律に則るにしても今の人事システムをそのためにわざわざ変形さ せる必要はない」というところであった。ただし,何らかのメリットがあるのなら積極的に法律に則る必要があるのではないかとい う少数意見が出た。また逆に,法律に則らずに今までどおりの人事システムを堅持することはできないのかという疑問も出された。

2) 助教授の任期

大半は「教授への昇格が禁止されている現状では任期を設ける必要はない」という意見だった。ただし,これまでの実績から判 断して妥当な範囲で任期を設定してもよいのではないかという少数意見があった。

3) 教授の任期

内部の助教授を採用するのではなく,すべて所外で充分な業績を挙げた人の中から厳正な人事選考を経て採用された人材 なので任期をつける必要はないという意見であった。

4) 施設助手の任期

所内外の研究者の支援業務を主とするポストなのでこれまでどおり任期なしでよいという意見で一致した。 5) 研究系助手

これまでの6年任期と同様,最初の任期は6年とするのがよいという意見にまとまった。しかし,再任の年数,再任の回数制限な ど簡単には決められなかった。そこでたたき台をつくってそれに対して所属系・施設に持ち帰り議論することとした。たたき台とし て再任3年で2回まで(最大12年)という案が出された。また,再任手続きは人事部会で採用時の選考委員会での審議に準じる形 で厳密に行うのが望ましいという意見が出された。

ただし,これまでの6年を越えた場合の主幹会議・教授会議での1年毎の任期延長説明は意義があるので,それに準じることは 続ける必要があるとの意見が出た。また,これまで学生・フェロー・技官など所内経験者は10年を最大とすること(例えば,6年の経 験がある者が助手に採用された場合には任期が4年に短縮)が内規として決まっていたが,これに準じる形で再任手続きとは独 立に10年を越える時点から(先の例では4年を越える時点から)1年毎に主幹会議・教授会議で延長説明を行なう必要があるので はないかという意見が出された。

(2)第2回任期制度検討小委員会(H9.12.15)

出席者 井上克也,小杉信博,米満賢治(谷村吉隆代理),藤井正明,宮島清一,森田紀夫,藥師久彌

(11)

    田中晃二(委員長)     齋藤修二(オブザーバー)     伊藤光男所長(途中退席)

前回の議論の結果を各所属系・施設に持ち帰って助手層を含めて全体の意見を聞いた結果を参考に,個々の委員の意見を 調整してまとめる作業を行った。

1) 助手の意見

12月8日に田中委員長のアレンジで助手に集まってもらって助手任期について意見を集約する会合を持ったので,その報告 があった。基本的には現行のやり方で不都合はないという意見であったが,法律に則った任期制を導入することに関して強い反 対意見は出なかった。任期6年という公募条件で採用されている現職助手から,任期制を導入した場合に所外の応募者に与え る印象を聞くことは,本来,無理であると判断される。また,理論系助手と実験系助手で任期に対する考え方が違うことが明らかに なった。理論系では研究室の設備に依存する要素が少ないので短めに任期をとらえる傾向があるのに対し,実験系では研究室 の設備に大きく依存し,研究環境の整備に任期の前半部を消化してしまうことが多く,長めに任期を考える傾向がある。

2) 全般

再度,確認した結果,全員の一致した意見は「今の人事システムで問題はない。法律に則るにしても今の人事システムをその ためにわざわざ変形させる必要はない」というところにあったが,導入するとしたら,今のシステムのメリットは殺さず,欠点だけを 解決する方向で検討すべきであるという意見が出され,現在のやり方の欠点について議論することにした。また,導入するにして も急がずに,ある程度,まわりの状況を見てからの方がよいのではないかという意見も出された。

3) 教授,助教授,施設助手の任期

現行通りでよいとする前回の議論の結果に対して大きく異なる意見は出なかった。 4) 研究系助手

これまで分子研で行われてきた助手への任期付き採用は流動性に大きく貢献し,分子研の活性化にも役に立ってきたが,改め て欠点を見直すとすると,ある場合には早めに任期を切って転出を促した方が本人のためになる場合があるのに,今のシステム では本人次第という要素が大きいということにあるのではないかということが議論になった。それを考えると,法律に則った任期制 を導入し,再任手続きを厳密にやっていくことがよいのではないか,また,再任の審議には採用時とは異なり所属教授・助教授が 加わらない方がよいのではないかという意見が出た。そういう観点からは任期制の導入に関して概ね賛成ではあるが,これまで のやり方のメリットをつぶさない限りという条件が必要とされるという付帯条件も出された。

これまで実行してきた6年任期を法律に則って改めて6年に設定することに関しては何ら異論がなかった。また,再任回数に制 限を付けなければならないとしても1回では無理があるとの意見になった。再任2回,最長12年を妥当とするのなら,6年任期,再任 3年が妥当な案となる。ただし,最長12年を限度とすることに関しては根拠が不明であるとの意見が出され,これまで在職した助 手の在職期間と在職年数,現職助手の採用年月を調査し,そのリストに基づいて最長在職年数の妥当性を検討することになっ た。

(付記) その後,所長と人事課の統一見解(文部省に確認済み)として再任の回数を制限する必要が無いことが知らされた。 その結果,最長12年の在職年限の必然性の根拠が不十分であることから,委員会では在職の最長年限を定めないこととした。

5) その他

これまで内部運用として2∼3年任期の助手の採用も実施してきたが,このような内部運用にまで法律を適用する必要があるの かどうか,議論になった。短期助手として勤めた後に,6年任期の助手として採用された場合に,短期助手として勤めた年数が6年 任期に全くカウントされないのであれば内部運用は問題ないのではないかという意見があり,人事課に確認することになった。

(12)

(付記) 確認の結果,6年任期の採用時に短期助手として勤めた年数は任期にカウントされないことがわかった。委員会では 短期助手などの運用上の問題は検討内容から切り離すことにした。

(3)第3回任期制度検討小委員会(H10.1.21)

出席者 井上克也,小杉信博,谷村吉隆,藤井正明,森田紀夫,藥師久彌     田中晃二(委員長)

2月16日の第12回将来計画委員会に向けて,本小委員会として提出するまとめの文書「任期制度について」を作成する作業 を行った。

1) まとめの文書の構成

まとめの文書の構成は以下のようにすることにした。

・これまでの人事政策の説明をまず行う。実績として流動性に大きく貢献し,法制化される前から先進的であったことを強調 する。

・分子研の教官の職種を法律に照らし合わせて位置づける。

・任期を設定する場合と任期を設定しない職種を規定する。具体的には研究系の助手への任期制の適用。

・これまで6年を越えた場合に主幹会議と教授会議で行ってきた研究系助手の1年毎の任期延長の手続きを強調する。

・再任手続きは3年毎に行うこととする。回数制限は設けない。 2) 従来の人事政策

人事政策と銘打って文書化したものがこれまで存在しないので,現人事部会長の岩田教授と前人事部会長の北川教授に意 見を伺って田中委員長がまとめたものをたたき台として検討した。これらは慣例的に行われてきたものであり,今後,変わりうるもの かも知れないが,これまでの実績の説明をしておくことは必須であるという理解に立ってまとめることにした。流動に貢献している という実績を示すデータが必要であるが,委員会としては,新たに作成することはせず,「分子研リポート’ 93」でまとめられた「教

官の在任期間一覧」を引用するだけで十分であると判断した。 3) 教官の職種

分子研の研究系教官はすべて法律でいうところの「先端的,学際的又は総合的な教育研究で多様な人材の確保が特に求め られる教育研究組織の職」に相当することが確かめられた。また,施設教官は業務があるため,任期制が適用できるいずれの職

種にも該当しないことが確認された。 4) 任期を設定する職

これまでの人事政策を守ることを原則とするが,研究系助手の任期6年は今後,法律に則って位置づけ直さなければならない。 他の職については,検討の結果,これまでの人事政策を変える必要はなく,任期を設定しないことが確かめられた。

5) 1年毎の任期延長の手続き

1年毎の任期延長の手続きこそ,分子研がこれまで行ってきた特徴ある政策であり,実績として効果的であった。主幹会議では その研究系全体に責任を持つ主幹が任期延長願いを行い,教授会議では助手が属している研究グループの教授・助教授が任 期延長願いを行うことは,教授・助教授側の責任を問うプロセスである。これは法制化で規定された再任手続きとは考え方が違 うものであり,今後もこのプロセスが形骸化しないために,ここで文章化しておくことが必須であるとの結論に達した。なお,任期延 長という概念は法律にないので,とりあえず「再任資格の承認」としてみたらどうかという案が出され,さらに人事課に問い合わせ るなりして表現を工夫することとした。

6) 再任手続き

(13)

法制化によって導入される再任手続きはこれまでのやり方の特徴を損なわないように注意深く行う必要がある。特に,3年毎に 再任が認められることで,3年は保証されると誤解されて,1年毎の任期延長手続きが形骸化してしまうことのないように気をつけ る必要がある。ただし,人事部会で行うことになる再任手続きは,助手本人の努力を所外委員を含めて直接問うという意義がある ので,再任手続きの導入は従来の1年毎の任期延長手続きの形骸化には結びつかないという意見が大勢を占めた。また,再任手 続きそのものは,再任の可否を決めるものであるが,「みだりに教員を解雇する手段として利用することがないようにする(文高企 第149号より)」ために,再任の否という結論は安易に出さないように注意しなければならないということが確認された。これまでの 実績あるやり方に照らし合わせると,再任手続きというものは否を出すところではなく「あと3年の内に転出努力を最大限しなさい」 という勧告をすることではないかという考えも出された。

(4)任期制度について

1. 分子科学研究所人事政策

分子科学研究所では創立以来,教官(教授,助教授,助手)の採用に関しては厳密に公募の方針を守り,しかもその審議は全 て所内5名,所外5名の委員で構成される運営協議員会人事選考部会に委ねられている。さらに,厳密な選考を経て採用された 助教授および助手は分子科学研究所教官の流動性を保つため所内昇格が禁止されている。施設の助教授・助手については例 外規定が設けられているが,実際には分野の特殊性から施設でただ一度,助手から助教授への昇格が認められた例があるだけ である。助手の6年任期もかなり厳しく守られている。研究系助手が6年を越えて勤務する際には毎年,本人の属する研究系の主 幹あるいは施設長が主幹・施設長会議においてそれまでの研究活動と転出の努力を報告し,同会議で承認された後,教授会議 でも同様の手続きを行い承認を得るという手続きをとっている。

教授と助教授の研究グループの研究活動に関しては,毎年教授・助教授全員が所長と研究顧問によるヒアリング,また3年お きには研究 系ごとに国内 委員と国 外委 員による点検・評価を受けている。さらに,教 授と助教 授の個人評 価は国外 委員により

confidential reportの形で所長に報告されている。このように完全な公募による教官の採用,国内外の外部研究者による評価なら びに内部昇格禁止等の内部措置により,分子科学研究所に勤務する助教授および助手は研究業績を上げて,大学や研究機関 に転出していくことを当然のこととしている。教官の流動性とは,全ての研究者が等しく,その能力に応じて研究環境が整った大 学や研究機関で研究する機会が与えられることであり,その結果,個々の研究者がさらに研究能力をのばして各研究分野で指 導者としての人材に成長することに大きな貢献をするものである。この観点から見ても,これまでの分子科学研究所の助手・助教 授の流動性の実績は「分子研リポート’ 93」にまとめられているように自負できるものであり,また,その多くの人が各研究分野で指 導者としての評価を確立させている。

2. 任期制度

教員の流動性と教育研究の活性化を目的として,平成9年8月に「大学の教員等の任期に関する法律」が公布された。この法 律に於いては教員の募集方法や採用・昇進基準ならびに業績評価の在り方について見直しを含めた一層の工夫・充実が求め られており,以下の(1)∼(3)の職種に関しては任期を定めて任用することが可能であると規定されている。

(1)先端的,学際的又は総合的な教育研究で多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき

(2)助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことを,その職務の主たる内容とするものに就けるとき

(3)大学が定め又は参画する計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき

分子科学研究所における助教授および助手の高い流動性は,任期制のみならず完全な公募による教官の採用および内部昇 格の禁止等を含む独自の人事政策によるものである。したがって,教官の流動性に関しては,法制化された「任期制度」よりも現 行の分子科学研究所の人事政策の方が厳しい制度であると思われるが,今回,法律に従った形での任期制度の点からこれまで

(14)

の人事政策を位置付け直すこととした。 2−1  対象職種

分子科学研究所では教授・助手あるいは助教授・助手が個々の研究グループを構成し,各研究グループの自由な発想のもと で研究が行われており,その遂行のためには多様な人材の確保が最も重要である。したがって,今回法制化された任期制を対象 とする上記の(1)∼(3)の職種のうち(1)の職に該当するものを任期制度の対象者とする。

研究系助手:従来,分子科学研究所で行われてきた研究系助手への任期付き採用は流動性に大きく貢献し,研究の活性化に も大いに役立ってきた。したがって,従来通り,6年の「任期」を設定する。 

施設系助手:全国共同利用機関としての各種測定機器の保守・管理等のサービス業務を行っており,(1)∼(3)の範疇に該当 しないことから,任期制は設定しない。

助教授  :教授への内部昇格が禁止されていることから任期制は設定しない。

教授   :所外で充分な業績を挙げた人の中から選考されており,研究所の管理・運営に対して責任をとるべき地位である ことから任期制は設定しない。

2−2  6年次からの1年毎の手続き

研究系助手の任期「6年」の期間内での転出に対しては,本人のみならず所属研究グループの教授あるいは助教授も最大限 の努力を払うことが必要である。両者の努力にも関わらず6年以内に転出先が決まらない際には,3年毎の再任手続(次項)に先 立ち,6年次から毎年,以下の2段階の手続きを行うものとする。

(1)当該助手の属する研究系の主幹は毎年,主幹・施設長会議に於いて,当人の研究業績と転出努力の報告を行い,承認 を受ける。

(2)主幹・施設長会議で承認された後,当該助手の所属研究グループの教授あるいは助教授は教授会議において当人の 研究業績と転出努力の報告を行い,承認を受ける。

2−3  再任手続

任期が満了する該当助手は3年毎に運営協議員会人事選考部会において再任の審査を受けるものとする。同部会は再任の 可否を検討し,再任が妥当と判断した際には3年間の再任を許可することが出来るものとする。

(付記) 以上の文書については第12回将来計画委員会において検討され,一部の修正(「再任資格」ではなく「6年次からの1 年毎の手続き」としたことなど)を行った上で大多数の承認を得た。ここでは修正後のものを示す。将来計画委員会では,従来行っ てきた1年毎の手続きを形骸化させることなく,分子研独自の任期制を確立すべきであるという事が確認された。そのためには,1 年毎の手続きと3年毎の再任手続の関係等について議論を煮詰める必要があり,今後,運営協議員会(特に人事選考部会)や評 議員会で議論することとなった。

(15)

5-4-2 教官停年制検討小委員会報告

平成 10 年 2 月 教官停年制検討小委員会は,以下の委員によって構成され,5 回の会合(平成 9年 10月 20日,12月 22日,12月 27日,平成 10 年 2月 5日,2月 23日)と電子メールによる意見交換を行い,停年問題に関する検討を行ってきた。12月 27日の会合では,所外の 方々の意見を伺う目的で次の 6 名の方々に出席していただいた。

岩村 秀(九大),加藤重樹(京大),北原和夫(東工大),田隅三生(埼玉大),籏野嘉彦(東工大),吉原經太郎(北陸先端 大),(浜口宏夫(東大):書面で意見表明)。

委員:渡辺芳人(委員長),岩田末廣,西 信之,塩谷光彦,鎌田雅夫,山下敬郎,岡本祐幸,田原太平

(1)はじめに

分子科学研究所は2000年に創設25年を迎えようとしている。開所以来の活発な研究活動によって,化学と物理学の境界にあ る分子科学の研究を推進するための中核としての役割を果たしてきた。その高い研究活力は,ここで育った多くの若い研究者が 全国の大学等で活躍していることに端的に表れている。言うまでもなく研究所の最大の目的は,学問上世界に誇れる成果を出す ことである。優秀な若い人材を積極的に発掘し,育て,C OEとして誇れるような環境を整えるべく様々な努力を行っている。このよ うな状況の中で,分子科学研究所では1,2代目の教授が次々と停年を迎える時期が近づき,研究所をさらに発展させるために, これからの研究所の人事のあり方と関連して,教授の停年年齢延長の可否を検討しなければならないとの認識が生まれ,停年延 長に関する検討を開始した。

(2)分子科学研究所における60 才停年制の問題点

研究所では,助教授の内部昇進を禁止するという人事方針から,必然的に教授は外部から迎えなければならない状況にある。 最近の社会情勢の変化にともなって,分子科学研究所の60歳停年制が分子科学研究所への新しい教授招へいの環境としてふ さわしいとは言えなくなってきている。

近年の社会の高齢化は,大学に限らず様々な組織で停年の延長を必然的に促しつつある。また,社会的に活躍する年齢も高 くなっているのが多くの分野における近年の傾向であり,身近な例では,60才停年制のために分子科学研究所から大学等へ転 出した諸先輩は,困難な状況の中にありながらも新しい環境の中で活躍の場を切り開いておられる。分子科学研究所における停 年は研究者としての能力・活力が高いレベルにある年齢に設定されており,こうした有能な研究者が60歳で研究を停止せざるを 得ない状況が生まれるとするならば,それは分子科学研究の発展を阻害する大きな要因となる。

(3)停年延長と研究所の活力

研究所の研究活動の面から検討すると,停年延長は両側面を持っている。既述のように,これまでに停年で研究所を去られた 教授の方々や,ここ2,3年の内に停年を迎えられる教授の方々の活躍ぶりは,研究グループの研究活動はもとより国内外の専門分 野におけるリーダーシップの面でも決して衰えてはいない。これらの教授の方々が60歳という年齢で分子科学研究所での研究活 動を停止せざるを得ないのは,研究所の損失だけでなく,国内外の学問的あるいは学会の損失であると見ることもできる。諸外国, 特に米国における「停年」の柔軟な運用と比較した場合,制度の硬直化と指摘することもできる。一方,停年の延長は,短期的に は教授交代の頻度の減少をもたらし,研究所の研究活動のマンネリ化や研究分野の固定化を引き起こす可能性があることも否 定できない。特に,すべての教授が同じように高い研究活動を60歳過ぎまで保つことができるわけではないことを直視しなければ ならない。また,停年延長は,分子科学研究所が採用している助教授の教授への昇進禁止や助手の「6年任期制」という厳しい人 事政策にそぐわないとの指摘もある。

(16)

分子科学研究所の教授定員は14人と数が限られている。研究所の比較的浅い歴史のために年齢構成に偏りが生じることが あり,一つの研究系の教授が短期間に続けて停年を迎える場合もある。他の多くの組織同様,年齢構成は組織の活力と影響力を 維持するためには決して無視できない要素である。一方,教授の採用に際しては,年齢ではなく,研究能力と研究分野こそが最 も重要な因子であることは言を待たない。教授を選出する実際の過程では,これらの要素に加えて,現実に選択できる「人材」が 重要な因子となる。結果として,比較的在任期間の短い教授を招へいする場合が出てくる。もしも,多くの国立大学と比べて3年か ら5年も停年が早いことが,分子科学研究所への赴任を躊躇させる原因であるとすれば,停年の延長によって教授として招へい することのできる人材の幅を広げることができるであろう。比較的高い年齢層の教授を採用する場合には,短い期間に確実に業 績を上げるとともに国内外の学会でリーダーシップを発揮し,研究所の活力を高めることが期待されると同時に,人事や将来計画 などの研究所の運営にその経験を生かしてもらえるという長所がある。一方,分子科学研究所では若い助教授が独立した研究 グループを形成し,新しい分野の開拓に挑んでいるが,教授にもこの役割があることは言うまでもない。従って,研究所独自の研 究を展開するためには,年齢にこだわらず,独自の研究を切り開く能力を重視した広い見地からの教授人事が望まれる。

分子科学研究所は活発な研究者を引きつけるための不断の努力を行っている。一方,先導的な大学の研究環境の整備が,相 対的に分子科学研究所の優位性を低くしている点も事実として認識する必要がある。しかしながら,充実した施設と予算のみが 研究所の評価を決めるものではない。研究所が持っている高い研究レベルを向上させようとする一層の努力が要求される。

停年の延長は,今後の分子科学研究所の発展に大きな影響を及ぼす問題であり極めて慎重に論議されるべきである。本小委 員会ではその点に留意して,検討結果を両論併記の形で報告することとした。今後,さらに全所的なコンセンサスが得られるよう に,広く論議を行うべきである。

(付記) 以上の文書については,第12回将来計画委員会において検討され,その討議の結果を受けて再度本小委員会を開 催し,修正を行った。最終的には,将来計画委員全員のレビューを経て,委員会報告とした。

(17)

5-5  「分子制御レーザー開発研究センター」の新設及び同第一回運営委員

会報告

センター設置の目的: 最近の分子科学の進歩が示すように,レーザーの性能の向上は分子科学の将来の発展にとって大変重 要である。これは,分子科学の広い研究分野にわたって化学反応の自由な制御とその設計が共通の大きな課題であり,レーザー の性能の進歩がこれらの研究を推進する上で最も重要な要となっているからである。今や,レーザーは科学研究のあらゆる場面 でふんだんに使われていて,これからは単に市販のレーザーを購入して改良を加えて用いるだけでは,世界的に先がけた研究 を展開して行くことは難しい。このような状況のもとで,分子科学研究所では研究者がレーザーの専門家と密接に協力し,目的に 合った新しいレーザーを開発し,新しい分子科学分野を開拓することが望まれてきた。当開発研究センターでは,特定の研究課 題に最適なレーザーシステムを開発を行うとともに,分子科学や放射光分子科学への応用研究までの学際的共同研究を一つの 組織で迅速にまた高いレベルで連携して行う目的で設置された。

5-5-1 運営方針

構成: 当開発研究センターは,分子位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー開発研究部,特殊波長レーザー開 発研究部の3研究部から成り,各研究部は助教授および助手で一つの独立な研究グループを構成する。

開発研究:各研究部は分子科学に新機軸をもたらす可能性のある特定の開発研究課題を課題提案者の研究グループと協力し て推進する。この場合,一課題研究の研究期間はおおよそ5年とし,評価の上で,延長も可能とする。

評価: 点検評価的役割を持つ当センター運営委員会を設置する。

業務: センター長及び施設技官は3つの研究部と協力して,センター所有の貸し出し用機器の管理,保守などの業務を行う。

5-5-2 第一回分子制御レーザー開発研究センター運営委員会報告

日時:平成10年1月9日 13:30-16:30 参加者:

伊藤光男 分子科学研究所長 運営委員

岡田  正 大阪大学大学院基礎工学研究科教授

植田 憲一 電気通信大学レーザー極限技術研究センター教授 中村 宏樹 理論研究系教授

藤井 正明 電子構造研究系教授 森田 紀夫 分子構造研究系助教授

齋藤 修二 センター長

猿倉 信彦 放射光同期レーザー開発研究部助教授 佐藤信一郎 分子位相制御レーザー開発研究部助教授 オブザーバー

平等 拓範 福井大学工学部助手,平成10年2月16日特殊波長レーザー開発研究部助教授赴任予定 北川 禎三 分子構造研究系教授,特定開発研究課題提案者

センター職員2名

センターが発足して初めての運営委員会なので,センターの全体的な紹介が主であった。最初にセンター長が委員および参 加者の紹介の後,伊藤分子科学研究所長がセンター発足の経緯,設置目的,その理念,運営方針の説明をおこなった。また,セ ンター長がセンター業務の目的,所蔵機器の紹介,業務の運営方針を紹介した。その後,分子位相制御レーザー開発研究部の

(18)

佐藤助教授,放射光同期レーザー開発研究部の猿倉助教授,特殊波長レーザー開発研究部の助教授に赴任予定の福井大学 工学部の平等助手が,それぞれの部での研究計画を紹介した。これにたいして内外の委員から個々の研究内容への質問に加 えて,以下のような,主な質問・コメントがあった。

1. センターグループ独自の研究と課題研究との関係,および,課題研究と研究系グループの関係 2. 個々の研究のタイムスケール。

3. 研究所全体のポテンシャルを生かす方向で。

4. 個々の研究目的はわかるが,センターとして統一されたイメージやコンセプトが出るのが望ましい。 5. 結果としてのサイエンスの提案が欠けている。いわゆるおもしろいサイエンスの提示が必要。 6. これからの予算の規模とその見通し。

7. 途中の評価の必要性。

これに対し,2. については担当の研究者が対応し,それ以外は所長が上にあげたセンター運営方針に基づいて対応し,また, センター長が補足した。特に,今回は,センター研究部の研究の独立性との関連で,特定開発研究課題の提案者による提案内容 の説明を行わず,各助教授(予定も含む)の研究計画のみを紹介したが,5.のコメントへの対応として次回の委員会において,特 定開発研究課題の提案者による提案内容の説明を行うこととした。

(19)

5-6 分子物質開発研究センタ−の現状と課題

分子物質開発研究センタ−は旧化学試料室より発展したパイ電子開発研究部に加え,新たに3つの研究部を創設し,また,旧 化学試料室,旧極低温センタ−および旧機器センタ−の物性機器関連部門の担っていた化学試料,低温冷媒,物性機器の管理 維持等に係わる研究支援業務を旧組織より継承して,平成 9年 4月に発足した。初年度に当たる本年度は,本センタ−の発足に 伴う組織変更に付随した業務の移管を実施しつつ,所内外の研究支援業務を前年度に準じ遂行した。加えて,3名の新センタ− 助教授の着任のための作業が進められたが,新センタ−助教授の新しい研究活動について評価を行うことは未だ時期的に不可 能な状況である。しかし,本年度発足した本センタ−の現状を点検し今後の改善への問題点を考えることは有用な事であると思 われる。

5-6-1 分子物質開発研究センタ−の基本的な性格

分子物質開発研究センターの最大の使命は分子科学に新しい展開をもたらす可能性のある新らしい分子物質を開発し,分子 科学の新分野の開拓とその飛躍的な発展を図る事である。また,同時に本センターは従来,旧化学試料室,旧極低温センターお よび旧機器センターの物性機器関連部門が支えてきた分子科学研究所内外の研究者に対する研究支援業務,即ち,共通性の 高い物性機器の集中管理と公開,低温冷媒の液化,供給および化学試料の分析などに関する業務を引継いでいる。従って,本 センターは研究系とは異なり,独自の開発研究の遂行に加えて分子科学研究所における研究活動に対する支援業務の円滑な運 営に対して責任を負っている。

本センターは助教授をリーダーとする4つの独立な研究グループをもって構成されている。助教授は独自の開発研究を推進す るとともに研究系の研究室と緊密な協力研究を行い共通の研究課題を遂行し,成果を挙げることが要請されている。現在の研究 課題は分子科学研究所で全所的に提案されたものの中から4件が選択され,本年度実施されたセンター助教授の公募はこれら の研究課題の主旨に沿って実行された。この様にセンター助教授は,研究の面からも従来の研究系助教授とは異なった役割,即 ち,課題研究の推進が期待されている。初年度にあたる本年度は,旧化学試料室より本センターに移ったパイ電子開発研究部の 山下助教授以外の3研究部の助教授の着任が年度末に近い時期となったために,新助教授については本格的な研究活動には 至らず,次年度以降のための研究環境の整備に費やされた。独自の研究や課題研究は次年度以降に進展するものと期待される。

物質開発研究の本格的な推進には多人数の研究者の協力が不可欠であると一般的には考えられている。本センター助教授 が二人程度の少人数のグループで如何にすれば,研究系との協力研究やセンタ−業務に関する仕事等とのバランスをとりつつ, 独自の研究をも展開して行く事が可能であるのかを検討する事は次年度以降の最も大きな課題である。

5-6-2 センター組織

分子物質開発研究センターは助教授をリーダーとする4つの研究部,パイ電子開発研究部,融合物質開発研究部,機能探索研 究部および分子配列制御研究部からなる。また,センター助教授には助手1名をつけることが決められている。現在,本センターの 助手は3名である。旧化学試料室から山下助教授とともにパイ電子開発研究部に移動した1名を除く2名の助手は旧機器センター の改組に伴い本センター所属となった。しかし,現在,この2名は旧機器センター以来の研究支援業務の分担とセンター設立以前 からの研究が継続されており,旧化学試料室から移動した山下助教授を除く3名の新センター助教授のグループの助手の確保が 各研究グループの研究組織の正常化のための最大の課題である。また,本センターは研究支援業務として旧化学試料室の化学 分析,実験廃棄物の管理,旧極低温センターの液体ヘリウムの液化・供給,窒素の供給および旧機器センターの物性機器の維持 管理および所内外の利用者へのサービス等の業務を担当している。本年度のこれらの業務は,主に,旧化学試料室,旧極低温セ ンターおよび旧機器センターから新センターへ所属替えとなった技官と助手によって組織替えによる不連続性を生じさせないこと

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